「生の欲望」と天龍源一郎さん
「すごく穏便な人生を望むくせに、あのー、平穏、つつがなく人生を過ごしていくと、『いや、こんなはずじゃない人生だった』と思いながらも、また違うところに一歩踏み出して、また0からスタートして、『こんなはじゃない、こんなはずじゃない』と思いながら、たぶん一生を終えていくと思うんですけれど、『これは何なの』と言われたら、最後は性格のなせるところで、これは、人は『貧乏性』と言うんだけれど、こういう人生がいいと思うんですけれどね。それで、たぶん、まわりから見たら、おもしろい『生きざま』をしてることであって、みんなが『ちょっかい』を出して、関わってみたいな、あいつの生きざまっていうところに行き着いて、興味を示してくれればいいんだと思います。それがまた、俺の明日のエネルギーになっていくんだと思います。いろんな人と関わって、また新しいその人のエネルギーをもらって、また勉強させてもらってということの繰り返しで、一生終わっていくのだと思います」
LIVE FOR TODAY-天龍源一郎― より
LIVE FOR TODAY-天龍源一郎― というのは、CSで放送されていたドキュメンタリー番組。
天龍源一郎さんがプロレスを引退するにあたって、引退への道程を記録したものだが、引退に向けての娘さんを中心とした家族の姿も描かれている。また、昭和プロレスの懐かしいレスラーがたくさん顔を見せている。
その番組の最後のほうに、天龍さんの人生論とも思われるインタビューがあり、まさに森田療法での「生の欲望」と合致している。さらには、人と人の関わりについても述べておられ、天龍さんの素晴らしい人生を彷彿させる。
生きとし生けるものには、生命の力と向上発展の欲望がある。没却する事の出来ない力である。蟲は蟲、獣は獣、人は人、各其素質は異なるが、此生の欲望は一つである。
森田正馬全集第二巻 P104
自然は、単なる生存という恩恵に満足せず、どうやらすばらしい後知恵を使ったようだ。じつは、生得的な生命調節装置は生と死の中間的な状態を目標とはしていない。そうではなく、ホメオスタシスの努力の目標は中間よりも優れた命の状態を、つまり、思考する豊かな生き物であるわれわれ人間が「健康でしかも〈幸福〉である」とみなす状態へと導くことだ
感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ アントニオ・R・ダマシオ著 田中 三彦訳 P60 第二章 欲求と情動について より