「記憶する自己」と「経験する自己」
記憶する自己は持続時間を無視するうえ、ピークとエンドを過大に重視し、さらに後知恵バイアスにも影響されやすい。その結果、実際の経験を歪んだ形で思い出すことになる。
ファスト&スロー(下) あなたの意思はどのように決まるか ダニエル・カールマン 著
村井 章子 訳 P316
この問題は、一般に記憶していることと経験したことは違っている場合があるということである。快楽や苦痛の記憶に基づく評価は、ピーク時と終了時の平均でほとんど決まり、その持続時間についてはその評価にほとんど影響を及ぼさないということらしい。
経験を歪んで記憶しているということは、その経験に関連する事象が起こったときに誤った対応をしてしまう可能性があるということになる。
以前に「軌跡と奇跡」「いのちの歌」で書いたように、まさに日常生活の、普通の日々の記憶が大事ということになる。
森田療法には日記療法があり、日々の経験を確認し歪んだ記憶にしないための効果も考えられるのだろうか。
※後知恵バイアス:実際にことが起きてから、それに合わせて過去の自分の考えを修正する傾向で、強力な認知的錯覚を生むという。