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アソビ

1896年にグルースが『動物のあそび』という本を書いた。この本では、おとなによって挑発されるまでは潜伏している本能の解発がアソビであると考えられている。現在では、アソビはおとなの行動の模擬と生命保存の技術と力の獲得手段、過剰エネルギーの解放などと考えられている。筆者自身は、アソビの起源は巣の中で同胞間の調和維持にあり、同種の社会グループの成員間の調整行動に発展していくと考えられている。

三つの脳の進化 反射脳・情動脳・理性脳と「人間らしさ」の起源 ポール・D・マクリーン 著  法橋 登 編訳・解説 P151

 森田が治療でクライアントに薦める活動は、気を慰めるようなものではない。単にDVDを見たり、トランプをしたり、歌を歌ったりするものではない。たぶん、上記の生命保存の技術を関係するものであろうと考える。環境に合わせて対応できる力、問題を見つけて対処できる力、仲間との調整能力などである。それはよりよく生きていくという命題に沿ったものに違いない。うまく生きられると『快』を感じたのに違いない。

 人類が進化するのに従って、別の意味での『快』の経験をすることになる。経済が発達すると、貨幣といういろいろな価値に代えることができるものを持つことが可能になった。それがギャンブルという、努力とはかけ離れた価値を獲得できるゲームが拡がった。また自分の努力なしに、注意を惹くようなコンテンツを得ることができるようになった。

 アソビの意味が違うのである。

第一日及び二日の間は、空を仰ぐこと、高き処に昇ること、又例へば高箒を持つ位のことも、総て筋肉を労する動作を禁じ、其他此期間は、例へば無意味に散歩すること、体操の如きをなすこと、口笛を吹き唱歌する等のこと、強迫観念とかに対しては、其あるがまゝ、起るがまゝに、静かに之を持ちこたえて居るといふ心持でやる。そして其間に、庭の隅や、木立の間の落葉を拾ふて掃除するとか、雑草をひき、根笹の枯葉を取るとか、或は気が向けば、蟻や植物を観察するとかいふ事をやらせるのである。

森田正馬全集 第二巻 第二期 軽き作業療法 P353~354

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