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カチッ・サー

 マクリーンが反射脳での定型行動について述べているのだが、以前に「固定的行動パターン」というほぼ同じの概念を読んだことがある。

 このような場面では、七面鳥の母鳥の行動はなんと馬鹿らしいものに見えることでしょう。ピーピー鳴くというだけで母鳥は自分の天敵を抱き、その一方で、ピーピー鳴かないという理由だけで自分のヒナ鳥を虐待し、場合によっては殺してしまうのです。その行動は、母親としての本能が一種類の音によって自動的にコントロールされているロボットのようなものです。エソロジストが私たちに教えてくれることは、七面鳥だけがこの種の行動を示すものではないということです。彼らは、さまざまな種の動物にこのような規則的で盲目的といえるほどの機械的行動パターンがあることを明らかにしつつあります。


影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか ロバート・B・チャルディーニ 著 社会行動研究会 訳 P5~

 これらは固定的行動パターンと呼ばれますが、求愛や交尾の儀式といった複雑な一連の行動もこのなかに含まれます。これらのパターンの基本的な特徴は、個々の行動が常に同じ形式、同じ順序で生起する点にあります。ちょうど、動物のなかにあるテープレコーダーに行動パターンが録音されているようなものです。ある場面が求愛を必要とすると、求愛のテープが再生されます。別の場面がマザリングを必要とすると、母親としての行動のテープが再生されます。「カチッ」とボタンを押すとその場面に適したテープが動き出します。そして、「サー」とテープが回って一連の標準的な行動が現れるのです。

影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか ロバート・B・チャルディーニ 著 社会行動研究会 訳 P5~

 さらにはチャルディーニは、この固定的行動パターンを引き起こすものを「引き金特徴」と呼んでいる。このことは、森田療法で行動を起こさせる「きっかけ」を掴むときに応用できそうである。また

 まだ情動反応を支配する大脳辺縁系のはたらきについては触れていないが、爬虫類的な定型行動を支配する脳組織が情動の乱れを導く可能性は否定できない。人間の場合、日常の定型行動の中断である週末や休日には、ある種の情動的乱れがあらわれる。会議や催し物などの行事には、あらかじめプログラムや講演要旨などが配布される。いずれも日常の定型的行動の中断による情動の乱れを緩和するためである。アメリカのアイゼンハワー元大統領は事前に協議事項を示されないと激怒したものである。

三つの脳の進化 反射脳・情動脳・理性脳と「人間らしさ」の起源 ポール・D・マクリーン 著  法橋 登 編訳・解説 P95

 というように、定型行動すなわち日常行動をしなければ、情動の乱れを招くということで、逆に日常行動をすることによって、情動の安定を図れるという可能性は森田療法は持っていると考える。

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