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ダマシオの「情動と感情」の理論とは

ダマシオの「情動と感情」の理論の一部を簡単にまとめてみました。これは「デカルトの誤り 情動、理性、人間の脳」 アントニオ・R・ダマシオ著 田中 光彦 訳 からのものです。

 

大事なことは、ダマシオの「情動と感情」の理論には、生体が環境に適応して、「死」を免れるだけではなく、よりよい「生」を生き抜くということが根本にある。

 

一次の情動(生得的な情動)というのは、生体が生きるために必要な反応で、欲求と本能の表れである。刺激があって、それを知覚し、ある条件に合致すると、ある情動を伴いながら、決まった反応が起きるということ。たとえば、大きな音が急に聞こえると、身体がすくみ(情動)、驚く(感情)。これらは辺縁系回路によるもので、扁桃体、前帯状皮質が関与するとのこと。ちなみに森田が悟った「死は恐れざるを得ない」というのは、まさにこの一次の情動と思われる。

 

二次の情動(後天的な情動)は前頭前野が関わり、今まで経験したものや、学習したものから生まれるのであるが、これが現われるのには前述の一次の情動を必要としている。すなわち前頭前野の傾性的表象1)の反応は、非意識的、自動的、不随意的に扁桃体と前帯状皮質に送られ、自律神経、運動システム、内分泌システムなどを特定のパターンで活性化する。それによって引き起こされた変化は、まず身体に作用して「情動的な身体状態」をもたらし、ついで辺縁系および体性感覚系にもどってくる。たとえば、知っている人の死を聞けば、心臓は高鳴り、口は乾き、皮膚は青ざめ、顔の筋肉は悲しげな顔つきを生み出す。その変化を感じることが悲しみを生み出す。

 

結局ダマシオのいう「情動」とは身体状態の一連の変化であるという。

 

そして、その情動を呼び起こした対象と結びつけながら〈その情動を感じること〉、つまり、対象と情動的な身体状態との関連の認識が「感情」であるという。

 

要するに、情動を知覚・認識することはすなわち感情を持つことで、その対象や環境に対して、意識的な柔軟な対応が可能になり、最初に述べたよりよい「生」を求めることができるということになるのだそうだ。

 

森田は、その対象の価値評価が誤っていることが多いということに注目し、それが人間にとっての葛藤や悩みの原因になることを指摘したのである。

 

 

注釈

1)傾性的表象 「傾性的」というのは他の神経パターンを使いながら、同じシステムに属し神経的に強く相互連結している別の回路に神経活動を引き起こすもの。具体的には、生得的な知識と経験によって獲得された知識もこの傾性的表象である。

 

 

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