ティモシー・ウイルソン
言い換えれば、非意識的な傾向を変化させる第一歩は、行動を変えることである。非意識的なレベルで偏見をもっているのではないかと心配な人は、可能な限りいつも、偏見のない方法で行動するよう最善を尽くすことができるだろう。そうすることで、二つの方法で自動的なレベルの変化を導きうる。第一に先に述べた自己知覚過程に従って、行動から非意識的に、自分は偏見のない人であると推論する機会が得られる。すなわちそれは、態度と感情を推論するための新しい「データ」を、適応的無意識に提供する。
第二に、ウィリアム・ジェームズが述べているように、ある行動をすればするほど、それはより習慣的で自動的になり、努力と意識的注意を必要としなくなる。社会心理学の変わらぬ教えの一つは、態度や感情の変化にしばしば行動変化が先行することである。このように、自分についての意識的概念に一致するように行動を変えることは、適応的無意識に変化をもたらす良い方法である。
自分を知り、自分を変える 適応的無意識の心理学 ティモシー・ウィルソン 著 村田 光二 監訳 P276~277
ティモシー・ウィルソンの考えは森田療法と共通することが多い。
外来森田療法のガイドラインでは、『4、建設的な行動を指導する』という項目がある。まさに行動から変えていくのである。
行動を変えると、ダマシオが指摘したように、必ず身体の変化は知覚という形で脳に戻ってくる。それは以前とは違う「データ」になる。
行動の習慣化や自動化は、森田療法での「努力即幸福」や「体得」にも関係する。それぞれの環境において、変化に対応することが精緻化される。
また宗教に深く帰依するようなときに、意識的理解よりも、儀式に重きを置くことは森田が述べているとおりである。