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ヒポコンドリーについて

 森田療法では、病の心配、不安の原因に「ヒポコンドリー基調」を挙げている。

抑もヒポコンドリーの語源は、ヒポは下で、コンドルは軟骨である。軟骨とは胸骨端で即ち其全体の意味は軟骨下の心窩部即ちミヅオチといふことである。吾人が物を心配し苦にする時には、此ミヅオチの所が塞がるやうな掻きむしるやうな苦悩を感ずる。此苦悩の事をヒポコンドリーといつたものゝやうに推測される。之が後には病の心配即ち心気症といふ意味に変化した。それで病を苦にするとはどういふ事かといふに、病は第一に吾人の生命を脅かし、又たとへ命にかゝらぬ迄も吾人の生活向上、幸福の障害となるものである。即ち生命、生活に対する脅威であると考へるからこそ病を心配するので、さうでなければ何も病を恐れる謂れはない。此故にまだ物心のつかない小児には心気症といふものはない。唯実際に病に罹った時に、単にそれ丈の苦痛があるのみで、取越し苦労、予期恐怖、強迫観念といふものはなく、極めて単純なものである。知識の発達するに従ひ、之が後に説明するところの思想の矛盾、悪智として働いて初めて強迫観念が起るのである。

森田正馬全集 第二巻 P129

 ポリヴェーガル理論では、迷走神経を進化的なものから整理し、環境の変化における人間の対応行動の変化のモデルを提示した。

社会交流システムがうまく働いていると、防衛反応が抑制され、私たちは落ち着きます。そしてお互いに抱き合ったり、目と目を見合わせたりして、良い気分になります。しかし危険が増すと、二つの防衛システムが優先順位に沿って発動します。危険を察知すると、私たちの交感神経系が主導権を握ります。そして「闘うか/逃げるか」という動きを可能にするために代謝を上昇させます。そして、それがうまくいかず、安全が確保されないと。私たちは無髄の古い迷走神経系を発動させて、シャットダウンします

ポリヴェーガル理論入門 心身に変革をおこす「安全」と「絆」ステファン・W・ポージェス著花丘 ちぐさ訳 P49~

 その無髄の迷走神経は横隔膜より下の内臓を副交感神経として調節しているということです。まさに心窩部付近から下、森田でいうところのヒポコンドリーに近いところです。

 格闘技の「三日月蹴り」という技術があるということが知られています。それはまさに心窩部を特殊な技術で蹴るのですが、相手は土下座をするように動かなくなるということです。これもポリヴェーガル理論と関係しているのでしょうか?

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