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心身一体論

 ダマシオと森田の考え方が「情動」と「感情」について非常に似ていると説明しましたが、またよく似ているのが「心」と「身体」の関係についてです。ダマシオ先生を紹介するときに「身体を重視する脳科学者」と説明しました。それは以下の引用を参照してください。

 

この概念は以下の言明をもとにしている。(1)人間の脳と身体は分かつことのできない一個の有機体を構成し、それは、相互に作用し合う生物化学的な調節回路と神経的な調節回路(内分泌、免疫、自律神経的要素を含む)によって統合されている。(2)この有機体は、一個の総体として環境と相互作用している。それは身体だけの相互作用でもないし、脳だけの相互作用でもない。(3)われわれが心と呼んでいる生理学的作用は、その構造的・機能的総体に由来するものであり、脳のみに由来するものではない。心的現象は、環境の中で相互作用している有機体という文脈においてのみ、完全に理解可能になる。

デカルトの誤り 情動、理性、人間の脳 アントニオ・R・ダマシオ著 田中 三彦訳

ちくま学芸文庫 P28

 では、森田正馬の著作では?

 然るに心身同一論は、今日の最も発達せる学問であって、吾人の拠る所である。即ち心身は同一物の両方面であって、只表裏の観方を異にするという迄の事である。

仰も精神とは吾人の生活活動其物であって、此活動を除いて外に吾人は認むべき何者をも持たない。吾人が笑ひ、顔を赤くし、物をいひ、手足を動かす、是等活動といふものを除いて吾人は精神といふものを知らない

森田正馬全集 第一巻 P369  神経質及神経衰弱症の療法 から

 やはり、二人の考え方はよく似ている。

 この心身一体論が「森田療法がなぜ効果があるのか」という命題の一つの解でもあると考える。それは体験的修正が、森田療法の治療の要であるからである。これも後で少し詳細に述べる予定。

 ただ、完全に同じではないことも記しておかなければならない。例えばスピノザに対する評価は全く異なる。また心身二元論のデカルトも含めて後で述べる。

※この内容の一部については第34回日本森田療法学会で発表した。

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