情動脳と理性脳2
精神療法家はたいてい、人が洞察と理解に頼って自分の行動を管理するのを手伝おうとする。だが、神経科学の研究で明らかになっているように、理解の不足から生じる精神的問題はほとんどない。問題の大半は、知覚と注意を司る、脳のもっと奥の領域からのプレッシャーに端を発する。危険な状態にあることを知らせる情動脳の警報レベルが鳴り続けると、どれほどの洞察をもってしてもそれを黙らせることはできない。こんなコメディが頭に浮かぶ。怒りの管理プログラムに七度も参加した人が、自分の習った技法を絶賛する。「見事といったらない。素晴らしい効き目がある―本当に頭にきていないかぎりは」
身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法 ベッセル・ヴァン・デア・コーク 著 柴田裕之 訳 P108
森田療法は、洞察と理解に頼ってはいない。情動や情動から生まれた感情をそのままに、行動すなわち身体の変化を起こさせる治療法である。理性脳で考えると「思想の矛盾」に陥ってしまうこともあるだろう。環境にあった行動はその情動脳も身体の変化から変えてしまうことになるのだろう。