意思決定の二重性
われわれの脳は、まず皮質下の報酬情報処理に関わる回路で潜在的(無意識的)にどちらが良いかを決定し、この結果が大脳皮質、特に前頭前野に送られて顕在化(意識化)される。しかし、前頭前野は、皮質下の領域が判断したときの材料とは異なる材料でこの決定を理由付けなければならないときがあり、その判断は時には皮質下の判断とは一致しない。
社会脳シリーズ5 報酬を期待する脳 ニューロエコノミクスの新展開 苧坂 直行 編 坂上 雅道 著 P98
森田療法で「気分と行動は別」とか「感情は感情、行動は行動」と建設的な行動を勧めることが多い。その意思決定においては、心理学的には『二重過程理論』ということがあるが、脳科学的にも説明できるようだ。
モデルフリーシステムとモデルベースシステムというものがあるそうだ。
ドゥら(Daw et al. 2005)は、脳における行動決定にモデルフリーシステムとモデルベースシステムという二つの制御システムがあることを主張した。ともに強化学習で表現されるが、 モデルフリーシステムは、条件付けやTD学習のように刺激や反応とその結果の関係をキャッシュしていく構造を持ち、直前の結果がすぐに学習に反映されるような柔軟なシステムではないが、確率的に安定的な予測を可能にする。モデルフリーシステムは、中脳ドーパミンニューロンとその投射先である大脳基底核によって構成される神経回路によって実現されていると考えられた。一方、モデルベースシステムとは、事象間の連合関係を樹形図状につなぎ合わせていったような構造を持ち、連合間の関係は状況に依存して分岐するので生体の行動選択に柔軟性を与えうる。さらに、このような事象間の連合の樹形図的構造は、特定の環境での生体の行動に関する内部モデルを形成することになり、行動決定に先立ってシミュレーションを可能にする。モデルベースシステムは、前頭前野を中心とする大脳皮質内の回路が重要な役割を果たしていると考えられており、意識的な意思決定とも密接な関係があると思われる。
社会脳シリーズ5 報酬を期待する脳 ニューロエコノミクスの新展開 苧坂 直行 編 坂上 雅道 著 P101
森田療法の技法も脳科学で説明可能になるのだろうか。