森田正馬と「注意」
森田正馬はどのように「注意」を捉えていたのか?その一面を書きたいと思います。
吾人が自ら或ることに注意して、精神の緊張を自覚するときに、之を意識的若くは有意的、能動的の注意と名づけ、其自覚のないときには、之が無意識的若くは不随意的、受動的の注意となるのである。
森田正馬全集 第二巻 神経質の本態 P302~303より
同じようなことが現代の心理学での言われていて、
心理学では、このような意図的に特定のものを見つけよう、特定の場所に目を向けようとする注意と、自分の意図とは無関係に注意が惹きつけられてしまう注意の二つに分けて区別してきた。前者はトップダウンの注意、そして後者はボトムアップの注意と呼ばれている。
ボトムアップの注意は反射的・非意図的で素早い注意であるが、トップダウンの注意は早くはないものの意図的で持続的な注意であると言える。
苧坂 直行 編 注意をコントロールする脳 神経注意学からみた情報の選択と統合より
少なくとも森田正馬は、当然と言えば当然のことながら、この二つの注意を理解していたと考えられる。
この二つの注意を考えることによって、「無所住心」という概念がもう少し理解しやすくなると思うのです。
それは次回に。
※この内容については第35回日本森田療法学会で発表した。