父のこと
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父は60台前半で脳出血を起こし、左半身が不自由になった。母は父がリハビリしてもなかなかよくならないと愚痴った。
両親も70台の半分位過ぎて、両親と一緒に小旅行に行きたくなった。というより残されている時間が少ないことを知って焦っていた。妹を誘って4人で淡路島の温泉に行った。母はちゃんと仲居さんにチップを用意していた。父はベランダの長いすにもたれながら暮れゆく夕日をじっと見ていた。
その後、
母も脳卒中で2回倒れ、倒れるたびに身体は少しづつ不自由になり、認知症は少しづつ進んだ。
父は不自由な身体で母を助けながら生活していたが、ある寒い日に二人が倒れているところが見つかった。父はキッチンで倒れ動けなくなっていた。母は父がいないと何もできないので、ベッドの中で重症肺炎となっていた。
その後、
母は回復したが、老健に入所することとなった。肺炎は繰り返し、病院と老健を往復した。父はいろいろな人に助けてもらいながら、自宅で一人で生活した。元気だった。
その父が今月急逝した。88歳だった。
今年、有難いことに褒章を頂き、父の希望で記念の家族写真の撮影とお祝いをする予定で、ホテルまで押さえていた。
葬儀も終わり、お世話になったケアマネさんに挨拶に行ったときに、こう言われた。
「お父さんからはいろんなことを学ばさせて頂きました。お身体が不自由になると自暴自棄になったりする人もいるんですが、お父さんは何事にも積極的に取り組んでいました」
「父さん、ほめてもらえたよ、よかったね。そして申し訳なかったね。もう少し早くお祝いをしていればよかったね」