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理性脳と情動脳

 ヴァン・デア・コークはPTSDの研究と治療が有名である。その著書である「身体はトラウマを記録する」を読んだ。

私たちが恐れに乗っ取られていないかぎり、理性脳はたいてい情動脳よりも優位に立っていられる。だが、私たちは、抜き差しならなくなったと感じたり、激怒したり、拒絶されたと思ったりした瞬間、古い地図を起動してその指示に従う危険がある。変化が始まるのは、私たちが自分の情動脳を「支配する」ことを学んだときだ。それは、惨めさや屈辱を捉える胸の張り裂けるような感覚やはらわたがよじれるような思いを観察し、それに耐える術を学ぶことを意味する。自分の中で起こっていることに耐えられるようになって初めて、私たちは自分の地図を固定して不変にしている情動を拭い去る代わりに、それと仲良くできるのだ。

身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法 ベッセル・ヴァン・デア・コーク 著 柴田裕之 訳 P213

 それと比べるのは森田正馬の発作性神経症の治療の部分である。

本患者は、余が往診した時、恰も昨夜其の発作があって、今夜も亦同発作があるに相違ないといって、之を期待して居たのであるから、余は之を幸として、患者に対して、之を治療する方法として、次のやうなことを実行するやうに説得したのである。即ち「今夜臥褥する時に、其発作が最も起り易いといふ横臥位を執り、自分から進んで、其の発作を起し、而かも其位置のままに、苦痛を忍耐し、且つ其発作の起り方から、其全経過を熱心に詳細に観察するやうにして下さい。然らば余は、貴女の其の経験によって、将来決して発作の起らない法をお教えする。若し此のために、今夜如何に劇しい苦痛があって、徹夜するやうなことがあったとしても、長い年数の苦痛と不安を取り去ることが出来れば、十分之を忍耐する価値のある事である」といふ風にいったのである。患者は直ちに其の実行を約束したのである。

 其後余が再診した時には、患者は「其夜余が教えたやうに実行したけれども、自分で発作を起すことが出来ないで、其まま五分間程も経たない内に、眠りに入り、翌朝迄知らなかった」とのことであった。

森田正馬全集第二巻 神経質ノ本態及療法 森田正馬 P367~368

 似たような意味ではないかと思う。森田は理性脳に働きかけて、その発作を観察させようとしている。そして、発作に耐える覚悟を持ちなさいと言っている。ここが、「煩悶則解脱」の部分である。その覚悟ができると、逆に症状は現れないのである。

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