自分の感情を説明する
私たちが対象とする子供の多くは、怒鳴ったり、命令したり、むっつりしたり、両耳にイヤホンを突っ込んでいたりする大人に慣れているので、言葉で上手に意思伝達ができたためしがない。そこで私たちは出始めに教師たちに、今まで違うかたちで感情について語ったり、期待を言葉で言い表したり、助けを求めたりする練習をしてもらう。子供が癇癪を起こしたときに、「やめなさい!」と怒鳴ったり、教室の隅に独りで座らせたりする代わりに、「ずいぶん腹が立っているんですね」という具合に、子供が経験していることに気づき、それを言葉で表したり、「安全な場所に行くか、それとも、先生の膝に上に座るかしたいですか」という具合に、選択肢を与えたり、「放課後、おうちに帰ったらどうなりますか」という具合に、子供を手助けして自分の感情を説明する言葉を見つけさせ、思いを表現し始めさせたりするよう、教師たちが促す。(あらゆる状況で安全になることは、けっしてないので)いつ本心を口にして大丈夫か、子供がわかるようになるまでには何か月もかかるかもしれないが、大人にとっても同じで、子供にとっても、自分の経験の真相を確認することは、トラウマからの回復に不可欠だ。
身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法 ベッセル・ヴァン・デア・コーク 著 柴田裕之 訳 P590~591
森田療法の技法では「感情の自覚と受容を促す」という部分がある。さらに他者に伝えらえる能力が必要になることを、コークのこの文章で説明している。