1. TOP
  2. 森田療法
  3. 脳科学
  4. ポール・D・マクリーン
  5. 説得療法

説得療法

 森田正馬は説得療法について、こう述べている。

 

尚ほ斯のやうな、胃癌とか肺病とか、いふものでない、といふ事を極力患者に証明しようとする目的の説得療法は、之によりて患者は、論理的、理智的に、自分が肺病ではないといふことを知り、肺病の心配はなくなるであろう。然るに之によりて、患者の「ヒポコンドリー」が軽快して、強迫観念がなくなるものと考ふれば、それは皮相の見であって、其強迫観念は益々他の方向に発展して、「ヒポコンドリー」性感情は、愈々其他の種々の身体的若くは精神的異常感覚に対して、其恐怖性を養ふことになり、其感情は、常に之を刺激し、之にかかづらうことによりて、益々其執着を強くするやうになる。されば患者が、苟くも此病の基礎たる感情の基調から解脱するのでなければ、たとひ肺病に対する姑息の安心は得られたにしても、患者の心配となる処は、此定めなき人生に、何時どんな重き病に罹るかも知れない。医者の知らない病が身体の内に潜んで居るかも知れない。黴菌がどんな所からついて来るかも知れないといふ風に、疾病恐怖、黴菌恐怖、不潔恐怖、家族や小児に伝染する心配を起し、種々の疑惑を生じ、益々追求し、彌々循環して、極まる所がないやうになる。

森田正馬全集 第二巻 P381~382

 ここでわかるように説得療法はマクリーンのいう「理性脳(新哺乳類脳)」に働きかけているのだ。それでは神経症はよくならない。森田療法では、理性脳にはたらきかけているのではなくて、「情動脳(哺乳類脳)」に働きかけているのだ。ということがわかる。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください