黒い犬はキリンを見た(1)
車で片道1時間を通勤していると何か楽しみを見つけないとつらいものです。助手席に乗っている妻の犬好きもあって、朝散歩している犬を観察する習慣がいつの間にかついたようです。
「大きな黒い犬がいるよ。熊みたい」
「連れているお兄さんかっこいいね」
黒い大型犬は小さな赤い舌を出しながら、カウボーイハットを被った長身痩躯のお兄さんと一緒に朝の散歩をしていました。冬の寒い朝は白い雪によく映えます。
ある夏の朝にはスポーツ量販店の駐車場で、黒い犬は夏休みの小学生の女の子と楽しそうに遊んでいました。またある時には、知っているおじさんを見つけたのか、尻尾を振って大歓迎でした。
「熊さん(黒い犬)、人柄が良さそうだね」
「それを言うなら、お犬柄でしょ」
通勤中のわずかな時間に、その黒い犬と会うのが楽しみとなりました。
「今日は会えるのかな」