黒い犬はキリンを見た(2)
その年の夏は暑い夏だった。そして北の街に大きなサーカスが何十年ぶりに来た。
そのサーカスが会場として選んだのは、黒い犬が散歩している途中にあるイベント会場の駐車場だった。
「え、何、キリンがいるよ」
「どうしてキリン?、シマウマもいる!」
わずかに歩道から金網フェンス1枚隔てたところにサーカスのキリンやシマウマがいるのだ。噂が広がり、キリンを見るために違法駐車をする車が増えて地方新聞に載ったくらいだ。
「サーカスなんてもう見れないかもな」
「見てみたいね」
結局私たちは人生で初めてサーカスを見た。良い席は売り切れて、ステージから遠かったけれど。キリン、シマウマの他に象もいたし、ホワイトライオンも芸をした。キリンは、招待されたと思われる子供たちの頭に帽子を乗っけていた。