黒い犬はキリンを見た(3)
その朝、散歩の途中の黒い犬はキリンを見ていた。お兄さんが「行こうよ」と促しても動かない。
下からキリンを見上げていた。何か考えているのか、何か話したいのか、じっと歩道側からお座りして金網1枚隔ててキリンを見上げていた。
それから時が経って、
「熊さん(黒い犬)、寝癖がついたような頭の毛だね」
「リーゼントみたいだ」
それからまた時が経って
「熊さん会えないね」
「そうだね」
そしてカウボーイハットを被ったかっこいいお兄さんにも黒い犬にも会えなくなった。
数年たって新聞にサーカスのキリンが引退したという記事が出た。キリンの名前はマサイ君という。またサーカスが北の街に来た。