行動の意味
森田療法の技法として、「建設的行動を促す」や「行動や生活のパターンを見直す」がある。では、そうすることによって、なぜ効果があるのかという理由について考える。それはティモシー・ウイルソンが一つの解答を与えてくれている。
意識的に行動を変化させることの利点は、新しい振る舞い方が身につくだけではない。それは新しい自己定義を与えてくれる。パーティで新しい知り合いと楽しくおしゃべりしたり、大講義で学生を沸かせたりする自分を発見すればするほど、自分対する見方が変化する。このことは、非意識的なレベルでも意識的なレベルでも、両方で起こりうる。私の適応的無意識は私が社交的な人間であると推論しやすくなり、この推論は私の意識的自己物語の一部にもなる。自己定義が変化すればそれだけ、無理に自分をそう仕向けるのではなく、自然と外向的に振る舞うことがさらに簡単になる。自動的自己は自動的行為を生み出すのである。
自分を知り、自分を変える 適応的無意識の心理学
ティモシー・ウイルソン 著 村田 光二 監訳、P279 より
「自己定義が変わる」ということらしい。そういえば、捕らえられたスパイが、寝返りを強要されたときに、「寝返ったふりをしよう」と一度要求に応じたふりをするだけで、完全に取り込まれてしまうというエピソードを読んだことがある。