感情の自覚と受容を促すには
人はどうすれば心を開いて感覚と情動の内部世界を探ることができるのか。私の治療の場合には、患者を手助けし、彼らが体の中の感じにまず気づき、次にそれを説明できるようにするところから始める。体の中の感じとは、怒りや不安や恐れのような情動ではなく、圧力や熱、筋肉の緊張、疼き、へたばり、空虚さといった、情動の土台となる身体的感覚のことだ。緊張緩和や快感と結びついた感覚の識別にも取り組む。患者たちが自分の呼吸や仕草、動きを自覚するようになるのを、私は手伝う。患者が、気にもならないと主張する不快な出来事について語るときに、胸を締めつけられるような感じや、腹部の痛みなど、体の微妙な変化に注意を払うように求める。
身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法 ベッセル・ヴァン・デア・コーク 著 柴田裕之 訳 P169
ここでダマシオの言葉の使い方についての比較をすると、ダマシオは身体の変化を「情動」と呼んだ。それを感知したときに「感情」を感じるとした。引用部分とは『情動』という言葉の意味が違っているのに注意。
森田療法の技法である「感情の自覚と受容を促す」という部分を考えてみると、感情を自覚する前に、身体感覚を正確に感じ取る必要がある。そうすると、「事象と身体感覚を並置し、どんな感情を感じるのか再確認する」という技法が考えられる。