カーネマンと森田療法
ダニエル・カーネマン博士は、2002年にノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者である。元々心理学者でもあり、その「プロスペクト理論」は有名である。
博士が一般向けに書いた著書が「ファスト&スロー」であり、今回ハヤカワ文庫版を読んでみた。
人間の意思決定システムにおいて、カーネマンはシステム1とシステム2と分類した。システム1は、速い思考、直観的思考であり、システム2は、遅い思考、熟慮熟考ということだそうだ。
本書に登場するシステム1とシステム2は、私たちが目覚めているときはつねにオンとなっている。システム1は自動的に働き、システム2は通常は努力を低レベルに抑えた快適モードで作動している。・・・システム1は印象、直観、意志、感触を絶えずに生み出してはシステム2に供給する。システム2がゴーサインを出せば、印象や直観は確信に変わり、衝動は意志的行動に変わる。
ファスト&スロー(上) ダニエル・カールマン著 村井 章子訳 ハヤカワ文庫 p48
システム1は自動的に働いてるということは、無意識的に働いているということなのか?そうすると、熟慮熟考するシステム2については明らかに意識的、ワーキングメモリが働いている状態と考えらえる。
読み進んでいくと、「実行制御」の話が出てくる。
システム2に備わっている決定的な能力は、いわゆる「タスク設定」ができることである。すなわち、慣れていない作業を指示されたとき、それに応じらえるように記憶をプログラムすることができる。・・・この作業をうまくこなせるよう注意力をセットするのにも、実行するのにも、努力が必要だ。しかし、何度もやれば必ず上達する。心理学では、このようにタスク設定を導入し完了するプロセスを「実行制御」と呼ぶ。
ファスト&スロー(上) ダニエル・カールマン著 村井 章子訳 ハヤカワ文庫 P70
つまり、システム2がタスク設定を成功すると、そのタスクはシステム1に入って、自動的に作業ができるようになるということか?これは、森田療法では「体得」と呼ぶのではないだろうか?また、努力することによって、いろんなタスクを身に着けるということは、自身の幸福に結びつきやすいものだろう。(努力即幸福)
カーネマンは、このファスト&スローでは、心身一体論については論じていないようだ。しかし、森田が考えていたことが一部一致していることは心強く思う。