拮抗作用2
森田は精神の拮抗作用を筋肉の活動に比較して書いている。
例へば上膊の屈筋と伸筋とを互に拮抗筋と名づける。此筋は、吾人が腕を屈げる時も、伸ばすときも、常に互に其力を加減、調節して、緩急、強弱、大小等、自由に其運動を円転、滑脱ならしめて居る。若し此拮抗作用がなかったならば、其運動は、全く器械人形の運動と同様になる。又両拮抗筋が同時に緊張すれば、腕は強直して動かなくなり、両筋の興奮が亢まれば、或は震顫、痙攣等の種々の現象が起る。又其一方が麻痺し、若くは強直すれば、腕は曲り若くは伸びたままに、強直の状態となる等の事になる
森田正馬全集 第二巻 神経質ノ本態及療法 P336
そして実際の運動神経はどのように働いているのか?という件。
たとえばA、B、Cの三筋に対する支配を考えると、脊髄の運動細胞プールでは、個々の筋に接続する運動細胞が明らかに集団を形成している。ところが一次運動野ではそれらを種々の組み合わせで活動させたり、抑制したりできる構造となっている。日常行う動作を考えてみると、そのほとんどは複数筋をいろいろな組み合わせで動かし、その他の筋は動かさないことで成り立っている。したがって、一次運動野の機能単位からは、ひとまとまりの筋に対して、興奮と抑制の組み合わせが出力されると考えられる
脳と運動―アクションを実行させる脳 第二版 丹治 順著 共立出版 P32
一次運動野は脳の解剖でいうと中心溝の前方に位置しており、最初に発見された大脳運動野である。森田が考えたとおりであって、どのような運動をするにも興奮と抑制の組み合わせを出力しているということである。
森田はまさに自然科学者であると思う。