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頚髄切断

久しぶりにダマシオと森田正馬の共通点の話。

身体と精神の関係について、同じように頚髄切断という場面を論じている。

さて身体と精神の関係は、大きく言えば死即ち生活機能の停止は同時に精神活動のなくなる時でまた例えば頸髄部で脊髄が切断さるる時、短時日で間もなく生命がなくなる。それは身体の触覚運動機能がなくなって精神活動の調節がなくなり、かつその他の生活機能の調節がなくなるからである。小さく言えば吾人身體のある局部に故障があれば必ず其の精神に一定の変化を起す。即ち吾人の健康なる精神活動は身体各器官機能の調和のある活動によるもので、その一局部に変化があっても必ずその波動が他におよぼすからである。例えば鼻がつまれば気がいらいらし、心悸亢進すれば不安になり、胃腸病のある場合には気がふさぐとかいうようなものである。これは身体内部の刺激から精神に及ぼす影響であるが外界の刺激でも同じ関係である。

森田正馬全集 第一巻 精神療法の基礎 P155

第一は、脊髄と延髄の接合部で脳を分離した下位離断脳のネコにおいては、脳波パターンに変化が生じないという事実である。・・・第二の結論は、ネコの脳幹が橋と中脳の接合部で切り離された、上位離断脳として知られる標本による。結果は重い障害であり、ネコは行動的にも脳波の記録を見ても、覚醒していない。・・・それは、橋の中ほどでネコになされた二種類の切断に関するもの。一つは三叉神経の入り口の真上で、もう一つはそれよりも約4ミリメートル上の部分で、それぞれ切断されている。・・・三叉神経レベルでの切断は恒久的覚醒状態をもたらすことが脳波で確認されたが、それより少し上での切断は行動的にも脳波的にも重い覚醒障害を引き起こし、上位離断脳の標本における橋-中脳部の切断の結果とまったくちがいがなかった。

無意識の脳 自己意識の脳 身体と情動と感情の神秘 アントニオ・R・ダマシオ著 田中 三彦 訳 P309~310

 森田の著述はダマシオからみると、詳細に欠けており実験で証明されたものではないが、「身体の情報が脳に上がらないと、精神活動もできない」ということが同じである。頸髄切断という例を森田は挙げているが、ダマシオは実験的に詳細を調べ、上のように書いている。そして、仮説として、
『主として生命のプロセスを管理し有機体を表象することに関わっている核は、覚醒と睡眠のプロセス、情動と注意、そして究極的には意識に関わっている核と、ほとんど切れ目なくつながり、相互結合さえしている。そしてたぶん、いくつか同一の核がそれら複数の機能と関わっている。』
このことを具体的に森田は表している。相互結合していなければ、鼻がつまったときにイライラなんかしないのだ。

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