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思想の矛盾を考える

 ダマシオの生命調節の考え方が森田の「思想の矛盾」を説明できるかという話。森田正馬は以下のように説明しています。

吾人は常に苦痛に当面する、之を避けようとする。絶えず欲望が起る。之を否定し抑圧しようとする。此の苦痛や欲望や当然、之を避け、否定する事の出来ない事実に対して、吾人の思考を以て之を処置し支配しようと努力する。そこに心の葛藤が起る。此の事を余は思想の矛盾と名付け

森田正馬全集 第二巻 P123  神経衰弱及強迫観念の根治法 から

 ダマシオはこのように記載しています。

われわれ人間は特定の対象と特定の情動を抑制しようと〈意図的〉に努力することができる。われわれは、どういう対象や状況ならわれわれの環境中にあってよいとするか、どういう対象や状況になら惜しみなく時間や注意を向けるか、を決断できる。・・・かつてスピノザが願ったように、われわれは情動を引き起こす対象との相互作用を抑制することで、実質的に命のプロセスをなにがしかコントロールしており、それによって有機体をいっそう調和のとれた(あるいは調和の欠いた)状態へ導いている。われわれは、実質的に、情動装置の専制的な自動性と機械性を無効にしているのだ。

感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ アントニオ・R・ダマシオ著 田中 三彦訳

P80 第二章 欲求と情動について より

 人間にとって、意識を持ち、思考するということは、他の動物に比べて生きていくうえで、有利なことです。

 例えばインフルエンザの注射は痛い、痛いものは避けたいが、一度インフルエンザに罹ってしまうともっとつらいことが待っている。仕方がないから予防注射を打ってもらおうという選択が行われるわけです。

 ただ思考は無限に広がり、実は誤りが多く、出来ないことをなんとかしようと思考で対処しようとするところに思想の矛盾が起きると森田は言っているわけです。

 まさに表裏の関係でもあります。

 

※この内容については第34回日本森田療法学会で発表した。

 

 

 

 

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